20091108
桐タンスは、従来は着物を仕舞う箱であった。今でもそれは変わらない部分があるが、桐素材の特性から着物以外の貴重品や大事なモノを入れる箱に変化しつつある。
箪笥屋が生き残る術は、「桐タンス=着物を入れる箱」という方程式にこだわらない事だと思う。もちろん、着物を入れる箱という考え方は捨ててはいけない。それは、とても大事な事である。
しかし、桐タンスの機能性から考えると、湿気や外敵から守る必要性があるのは、着物以外にもたくさんあるという事だ。平安時代から正倉院の宝物殿に桐箱があるように、貴重品を仕舞う箱として、頭を柔軟に考える必要がある。
弊社も毎年、宮内庁に桐の本箱を納品している。職人に言わせると、箪笥よりも手間がかかるそうだ。
桐タンスの素材と機能で、単純に「大事なものを収納する箱」に特化すると実に色々な商品が考えられる。桐箱屋では、とても作ることができないもの。上質な桐素材と卓越した職人の技で様々な収納家具が製作できる。
先日、ある会社の社長宅にある、ネクタイ箪笥を見る機会があった。ネクタイを専門に収納する箪笥である。ずいぶん昔の製作であったそうだが、デザインは、むしろモダンであり、素敵であった。
長野県から新潟へ来た、大学の教授から聞いた話である。新潟では、湿気が多くて、コレクションのカメラが湿気で故障したと聞いた。せっかく加茂という産地があるのだから、カメラ箪笥を注文すれば良かったと聞いた。なるほどと思った。
大事な書類を入れるのに箪笥を製作してほしいと言われた事があり、書類箪笥を製作したことがある。浅い引出しで、10段程の引出しがついた箪笥だった。
総桐の金庫を製作したこともあった。からくりの特殊鍵が付いており、火事に強いという理由から金庫を作ったのだが、元々、桐素材は、熱伝導性が非常に低いので、大型高級金庫の内側には金庫が使われる事が多い、というのが製作のきっかけである。
考えると無限にある。収納性で考えると、加茂の桐箪笥の素材と技術は、世界一品であると言える。
イタリアのシルクの産地、コモ市は、新潟県の十日町市と姉妹都市だそうだが、どちらも絹製品の産地である。私も以前、コモへ行き、コモ湖の湖岸にあるホテルに泊まったことがあるが、シルク製品は、湿気を嫌うので、保存に困っている話を聞いた事がある。
コモ湖の対岸には、先日亡くなった有名なマイケル・ジャクソン氏やアメリカのトップスター歌手である、マドンナの別荘もあり、高級別荘が多くあると聞いた。
世界中に桐タンスを販売するのであれば、着物を仕舞う箱だけではなく、貴重品を仕舞う箱として捉えて、商品化し、販売していく必要がある。これからは、本家の日本も同じ考え方で新商品開発していく必要があると思う。
2012-08-22 17:50:00
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